Web 好きにはたまらない Weaving The Web を読んで
はじめに
ずっと読みかけで積んでしまっていた「Weaving the Web: The Original Design and Ultimate Destiny of the World Wide Web」(以下、Weaving the Web) を読んだ。読んだ内容を忘れないように備忘録として書き留めておく。¶

Weaving the Web とは
「Weaving the Web」はひとことで言うなら、Web 好きにはたまらない本だ。著者は Tim Berners-Lee 氏と Mark Fischetti 氏で、この本には Web の発明者である Tim Berners-Lee 氏と World Wide Web の歴史について事細かく記されている。2000年出版の本なので、最近の話は含まれておらず、今から20-30年ほど前の話が書かれている。¶
その中には HTTP や、URI、HTML をはじめとする World Wide Web に必要な技術要素や、Web にかかせないブラウザがどのように開発されてきたのか、どういった思想で開発されてきたのかが記されている。¶
今や私たちの生活になくてはならなくなった Web だが、当時はその必要性がうまく理解されていなかった。Web について理解を得るために Tim Berners-Lee 氏が、世界中を飛び回って Web を売り込んだり、ブラウザ開発を様々な人にお願いしたりする様子はまるで起業家のようだった。¶
そして徐々に人々に受け入れられ、Web でページを公開しているサーバの数が増えていく。 Web をより強固なものにするためには、より多くのレビューが必要であることから、 IETF (Internet Engineering Task Force) での URI や HTTP の標準化を勧めたり、World Wide Web Consortium の設立と HTML の標準化など、どんどんと Web が成長していく様はまるで、マンガのようなストーリーだった。¶
そのなかには Mosaic や Netscape、Microsoft と Windows 95 などブラウザ戦争を語る上では欠かせない登場人物の記載もあり、Web が好きでもあり、特にブラウザが好きな筆者はワクワクしながら読み進めた。¶
興味深かった点
個人的に印象に残っているところを少しメモとして残しておく。¶
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Hypertext は Tim Berners-Lee 氏考案の概念ではないこと
- Ted Nelson 氏が考案した概念で、Nelson 氏もザナドゥというシステムを作っていた
- その他にも Hypertext をシステム化しているチームもいたが、Web が受け入れられた
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Web が General Public License (GPL) で公開されかかっていた
- IBM がそれに懸念を示しているという噂が流れてパブリックドメインにした
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SGML コミュニティは HTML を劣っているサブセットとみなしていた
- 「the SGML community was still criticizing HTML as an inferior subset, and proposing that the Web rapidly adopt all of SGML」という表現がある
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1994年頃すでに、Netscape
が無料でブラウザを提供してトップページを自社ページにして Web
広告を配置して利益を得ようとしていたこと
- この頃からブラウザは無料で使えるのが当たり前だった
- 有償が当たり前の世界だったらもっとブラウザに多様性があったのかもしれない
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Netscape (Microsoft に対抗するために) が IPO をして $4.4 billion
を集めて当時一番の IPO 額を達成した
- そんなに資金があったんだ
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Tim 氏は Web が商用利用されていることには怒ってはいない
- けどお金があったら家族にどんなことをしてやれたか思うことはある
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2000 年当初にコラボレーションができるツールを渇望していた
- Google Workspace を思い浮かべた
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セマンティック Web
- 2000 年当時から機械が理解できる情報が大事だと提唱していた
その他
残念ながら日本語版の「Webの創成- World Wide Webはいかにして生まれどこに向かうのか」は絶版になっており、Amazon で買うには少し高い。レビューを見ると、日本語版は翻訳の過程で少し文章が抜けてしまった部分もあるようなので、原著で読んでみるのが良いかもしれない。¶
おわりに
Weaving the Web は Web 好きにはたまらない本だ。Web がどうやって始まったのか、どういう歴史を辿ってきたのかを知りたい方がいたらぜひ読んでみることをおすすめしたい。¶